とりあえず書きます

とりあえず読んだもの、観たもの、聞いたもの、食べたものなどについて書いていきます。とりあえず書いて書き直されることもあるでしょう。

【読書】マデリン・アシュビー 『vN』

 

 

vN (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

vN (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

 

vN (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)


5歳のエイミーはフォン・ノイマン式自己複製ヒューマノイド「vN」の子ども。vNの母親の「複成」で、人間の父親と3人で暮らしている。しかし、彼女の 日常は、卒園式の日に現われたvNの「お祖母ちゃん」、ポーシャの襲撃で一変した。エイミーが母親を助けようと、ポーシャに噛みついて呑み込んだ途端、彼 女の身体は急成長し、大人になったのだ……。実はエイミーたちは、vNなら必ず備わっているはずの人間を傷つけないための安全機構が壊れていた。危険な vNとして、あるいは人間の支配からvNを解き放つ鍵として、エイミーは追われることになるが……。波乱万丈のジェットコースターSF。                                 Amazon.co.jp 商品紹介より

 

 小説の構造としてキーとなっていると感じたのは、vNが食べることで、自己増殖が可能と言う設定かなあと思ったり。宗教団体の狂気によって生み出され、現実社会で便利な存在として、そしてなにより性的な存在として人間に搾取されるvNという存在は、人間に「喰べられる」存在で、それが食べることで自己の存在を複製し増殖させていくその連関が構造的にはなかなか魅力的。物語も展開が素早く、翻訳が実に丁寧で(元ネタばらし註は親切すぎるか議論が分かれるかもしれないけど)読みやすく一気に楽しめる。

ただ、意識に関する処理あたりが物足りないのが欠点というか、物足りないところ。人間を傷つけないためのフェイルセイフの設定のなかで、「人間が傷つけられるところ」を見るとある種の不具合がおきるというのがあるけど、この「人間」「傷つく」あたりを動意識の中で処理するのかとか。つまるところ、人間と人間でないものの境界というロボットSFに多分不可避に埋め込まれた問いに対して、いまいちに感じてしまうのだ。(そういうとこは意図していないのかもしれんけど)

そいったいみで、楽しいエンタメという以上はなかなか読みきれない。なんか、問いは感じられるけど、SF的、思弁的な解答となるとちょっと物足りないという意味で、今のSFアニメぽいところもあるとか思ったりはする。かなり直感的だけど(著者も好きみたいだしなあ)

基本的には、楽しかったので、続編出れば読むと思う。ハビエル可愛かったし。