読書 いくつか
チャイナ・ミエヴィル『クラーケン(上)』ハヤカワ文庫SF
ロンドン自然史博物館に保管されているダイオウイカの瓶詰の剥製がある日衆人環視の中で一瞬で消えうせた。居合わせたイカ担当学芸員のビリーが巻き込まれるのは、イカを崇拝するダイオウイカ教団、イカ教団から脱走したエージェント、喋るタトゥーが率いる犯罪組織、スコットランドヤードの魔術カルト特務課、ストライキ中の使い魔たちを率いるスト指導者の精霊?といった濃い面々。そいつらに翻弄されながらもう一つの(闇の)ロンドンを彷徨うビリーの運命は、触手に導かれて下巻に向かうのであった。
というように、ミステリーのようにはじまった物語は、魔法と影が跋扈するロンドンをめぐる物語として展開されていく。使い魔のストライキ当たりのエピソードにミエヴィルらしさを感じる。
本作は都市の物語だと思う。ロンドンという都市の物語だ。魔法が出てきても、魔法使いが歩いていても、イカ教団が潜伏していても、それは現実のロンドンの影の向こう側にこっそりと隠れているように、現実の影の延長のように思わされる。ロンドンへの詳細な描写がそれを支えていることはもちろんだが、それだけではない何かがあるようで、それを確かめるためにも早く下巻を読もうと思う。
田浦秀幸『科学的トレーニングで英語は伸ばせる!』マイナビ新書
立命館大学で英語教育に従事する著者が説くのは、第二言語習得研究に基づく英語学習法。基本的な考え方は「日本語を覚えたのと同じ方法で英語を学ぶことは普通はできない」。ここから4技能についての、学習科学等に基づいた学習法が紹介される。魔法のようなメソッドがあるわけでなく、文法や語彙の大切さを説き(タスクやシチュエーションに合わせることは大切だが)。正しい反復を説く。また、重要な点として「自分が達成している、進捗していっているという感覚を適切に取り入れる」必要性が指摘される。これは、英語に限らないなあと思う。