とりあえず書きます

とりあえず読んだもの、観たもの、聞いたもの、食べたものなどについて書いていきます。とりあえず書いて書き直されることもあるでしょう。

【読書】 佐藤賢一 『小説フランス革命 3』

 

バスティーユの陥落 小説フランス革命 3 (集英社文庫)

バスティーユの陥落 小説フランス革命 3 (集英社文庫)

 

 デムーランが扇動した、7月14日のバスティーユ襲撃がとうとうはじまり、革命が一気に始まっていく。そして、ヴェルサイユ行進によってルイ16世がパリに連行され、革命は一気に加速する。

 やはり面白いのは、革命の激動の描写と平行して描かれる、憲法制定議会でのミラボーロベスピエールの対立。

 王に絶対的な拒否権を与えようとするミラボーと、それを拒否するロベスピエール。その対立は議会の独断専行、暴走への安全弁としての王の拒否権を政治にシステムとして組み込もうとするミラボーの政治システムへの信頼と、人民の正義=理性を盲進し猛進するロベスピエールの対立であり、

 ミラボーの思惑(王を革命の一部としてシステム化しようとする)が、ヴェルサイユ行進(食い詰めた女達の蜂起=民衆の暴走)によってうちくだかれ、我々が歴史から既に読み取りずみの、絶対的な善意が地獄への敷石として置かれていく過程としての、「恐怖政治」への道が読者の脳内に現出するその瞬間の絶望的で絶対的な歴史に対する感覚を生み出すところに、小説として歴史を描く、史劇の快楽はあるのだろうと思ったりする。